患者データを用いるQAマニュアル

Ver.1.3 2003.9.18

はじめに

 

日本臨床検査自動化学会科学技術委員会は、平成13年9月に「汎用自動分析装置の性能確認試験法マニュアルVer.1.2(2001.9.13)」を、平成14年9月に「日常検査法の性能試験法マニュアルVer.1.3 (2002.9.12)」をそれぞれ発行した。今回、試験法マニュアルの第3冊目として「患者データを用いるQAマニュアルVer.1.3 (2003.9.18)」を発行することとなった。

このQAマニュアルは、患者データを用いる日常検査の質的保証(QA)に関する方法を取り上げたものである。

 本マニュアルで取り上げている患者データを用いるQA手法は、個別データの信頼性保証を目的とする方法と、測定精度の保証を目的とする方法についてである。

個別データの信頼性保証を目的とする方法は、検体の取り違いチェックなど検査過誤の管理に用いられる。取り上げた手法は、極端値チェック、前回値チェック、累積デルタチェック、項目間相互チェックなどである。このうち極端値チェックや項目間相互チェックは、自動分析装置のデータ管理機能の一つとして組み込まれている。

一方、前回値チェックや累積デルタチェックは、測定対象患者の過去の測定値を必要とするため、臨床検査システムの中に組み込んで処理する形態が一般的である。何れの手法も、検査結果が臨床側に提出される前段階において、実時間(リアルタイム)処理することが前提となる。

これら個別データ管理に用いられる主な手法は、わが国で開発されたものが多く、この種の領域で国際的にも誇れる内容になっている。

 測定精度の保証を目的とする方法は、測定法の正確さや精密さが変化しているかどうかの管理に用いられれる。取り上げた手法は正常者平均法、潜在基準値平均法、精度プロフィール図、移動平均法、|R/XB 法などである。これらの手法は、測定処理の一バッチ、ごとに処理することが多く、また、測定精度の事後チェック的側面が強いこともあり、管理試料を用いる精度管理法の補助的手段として用いられることが多い。

 管理試料を用いるQAは、測定系全体を共通に監視するものであり、これで個々の患者データの保証はできない。個別データ管理が実行されることではじめて個々のデータの保証が得られることになり、これにより科学的にも根拠を持ったデータとすることができる。

 個別管理の実際については、システムの支援を受けることが効率的である。しかし最終的には、担当者の臨床検査医学的な視点でのチェックを経ることが求められるし、また、このような観点での監視ができることがプロとしての能力でもある。

 患者の測定データのQAの良否は、医療の質の良否に直接影響を与えるものである。問題点の抽出と改善を絶えず繰り返しながら、データの質の向上を図ることがいつも求められる。本マニュアルを基礎にしてより検査データのQAシステムをさらに磨き上げていただきたい。

 

平成159

科学技術委員会委員長      克彦

 

 

 

臨床検査の被検検体および検査結果の使用について  ………………………………   6

 

1.患者データを用いるQA手法の概要  ……………………………………………   7

1−1.序文  ……………………………………………………………………………   8

1−2.適用範囲  ………………………………………………………………………   8

1−3.個別データの信頼性保証を目的とする手法  ………………………………   8

1−4.測定精度の保証を目的とする手法  …………………………………………   8

1−5.運用形態  ………………………………………………………………………   9

 

2.用語の意味    ………………………………………………………………………  11

 

3.個別データの信頼性保証  …………………………………………………………  15

3−1.極端値チェック  ………………………………………………………………  16

3−2.前回値チェック(単項目デルタチェック)…………………………………  18

3−3.多変量デルタチェック  ………………………………………………………  21

3−4.累積デルタチェック  …………………………………………………………  22

3−5.項目間相互チェック  …………………………………………………………  24

3−6.出現実績ゾーン法(参考資料)………………………………………………  26

 

4.測定精度の保証  ……………………………………………………………………  29

4−1.正常者平均法”average of normals” method  ……………………………… 30

4−2.潜在基準値平均法  ……………………………………………………………  31

4−3.RERと精度プロフィール図 …………………………………………………  32

4−4.血球数算定検査CBCのチェック   …………………………………………  35

4−5.移動平均法(加重移動平均法)  ……………………………………………  35

4−6.シングルチェック法  …………………………………………………………  38

4−7.lR/Xバー法  ………………………………………………………………  39